「清経(きよつね)」　シテ：浦田保親

心ならずも戦いに巻き込まれていった清経。次第に追いつめられて行く有様、その心の葛藤。
思慮深く行動力に欠けていた清経ではあったが、最期は「雑兵に討たれるよりは」と自殺を選んだ、男のプライド。
また、死後すぐに妻の夢枕に現れる、清経の妻への愛情。平清経の心を描いた、悲しくも美しい名曲です。

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• 平清経は、平家一門と共に西国へと逃れていたが、敗戦につぐ敗戦で絶望し、豊前国（福岡県）柳ケ浦で船より自ら身を投げ命を絶った。その後、家臣の 淡津三郎は清経の妻を訪ね、その事を伝え、形見の黒髪を届ける。それを聞いた妻は、突然の報せに驚き、せめて討ち死にするか病死するならともかく、自ら命 を絶つとはと、嘆き悲しむ。形見の黒髪を見るにも耐えず、涙ながらに眠りにつく。
  するとその夢枕に清経の亡霊が在りし日の姿で現れ、妻に声をかける。妻は夢の中での再会を喜びはするが、なぜ自分を残して自殺したのかと、恨みを言 う。清経は、せめてもの慰みにと、最期の様子を物語り始める。

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• 船を乗り継ぎ西へ西へと逃れて行ったが、筑紫の戦にも敗れ、願をかけた宇佐八幡の神からも見放されてしまった。白鷺の群れる松を見ても、源氏が白旗 をたてて攻め込んできたと思って肝をつぶしてしまう有様。船上で横笛を吹き今様を歌い乍ら、また不安さや心細さに心を押しつぶされ、ついに前途を絶望し、 美しい月夜に船より身を投げ命を絶った…

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• 死後なおも修羅道にて苦しみを受けるが、入水の時に念じた十念の功徳で成仏が出来たと言い、消えてゆく。